CHLで使う教材と参考図書
試練と矛盾をはらんだケース教材で視野と発想力を鍛える
ケース教材はDL可能。自由にお使いください!
各Dayの「問い」とケース教材
CHL学科では、各Dayに一本のケース教材だけで議論を進め、学習を深めます。同じケースを読んでも、主人公が置かれた状況や地域の実情に関する観察や推測、課題と捉えるものへのアプローチは多岐にわたります。真剣にケースに入り込み、互いに主張を交わすことで、地域にかかわるリーダーに必要と考える「批判的思考」「複眼的視角」「メタ視点」を養う設計です。
Medical Studioでは、独自に開発したケース教材を無償で公開しています。ケース教材そのものよりも、そこで起きる議論に大きな価値を見出すためです。 下記に、各Dayの問いと、ケース教材をご紹介します。また、ページ末には、CHL学科で紹介する参考図書の一部をご案内します。合宿でさらなる学びが必要と気づいた受講生が手に取ることで、思考を深めることができる本を選び、ご紹介しているものです。
Day 1「関係者を同じ舟に乗せるダイアログ・スキル」
ファシリテーションの本質的発想を理解し、学びの基礎的能力を構築します。学習要素は、場のマネジメントです。ファシリテーションという考え方を通して、下記の問いに答えを探していきます。
- 人数が多いと知識は豊かになる、けれども合意形成は難しいのはなぜ?
- 何のためにファシリテーションが必要なのか?
- よいファシリテーションと、悪いファシリテーションの違いはなにか?
- 果たして赤の他人どうし”合意”できるのか?
- 合意形成と意思決定の違いとは何か?
- コンフリクトは「回避・解決」するものなのか?「歓迎」するものなのか?
- アリバイ作りの会議は、「悪」なのか?ワークショップ疲れの本質とは何か?
Day 2「機能する多職種チームのつくり方、動かし方」
ともに働く仲間との関係構築、役割分担の考え方を学びます。学習要素は、チーム・ビルディング、チーム・ワークです。この日の問いは、下記のようなものです。
- 医療は一人でできない、しかしチームでもできない。その本質は何?
- チームは何のために必要なのか?
- よいチーム/機能しているチームと、悪いチーム/機能していないチームの違いは何?
- 機能するチームの副作用は?機能しないチームの効用は?
- チームをささえる原理とは何か?
- 果たしてチームは「マネジメント」可能なのか?
Day 3「人を動機づけるヘルスケア・ビジョンのつくり方」
ビジョン構築の必要性、手順や、それを発想・デザインするための視点・視座を学びます。学習要素は、ビジョン構築、デザイン発想です。この日の主な問いは、下記のようなものです。
- ビジョンは、何のために誰のために必要なのか?
- 最初からビジョンがないと、“うまく”いかないのか?
- ビジョンは、誰とどのように描いていくことが有利なのか?
- ビジョンは、何に根ざして描かれたほうが有利なのか?
- ビジョンは、可変か不変か?
Day 3から合宿2回目。本格的なケースを1日1本用いて、真剣に当事者として議論を深めていきます。この日のケースは、「物語が人々を動かす」というタイトルです。人口5万人の地方都市にある、120床の市立病院に赴任してきた10年目の医師。義母の介護のため、子どもとともに妻の実家に引っ越してきた医師は、地域連携室をまかされます。この街をどう眺め、何を掲げて、誰と何をすべきなのか、を考えるケースです。
Day 4「地域のチカラを活かす協創戦略のつくり方」
地域資源を特定し、エコシステム(生態系)を構築する戦略発想と手順を学びます。学習要素は、戦略構築、システム思考です。この日の主な問いは、下記のようなものです。
- 戦略とは何か?どのような組織、状況に何故それが必要なのか?
- 戦略の副作用とは何か?
- 新たなニーズに対応するための戦略の本質とは何か?
- 非医療者や住民とも一緒にまわる「新たな生態系」をどのように構築できるのか?
この日も、本格的なケースを1本用いて、真剣に当事者として議論を深めていきます。この日は、「コミュニティの中で?コミュニティとともに?」というケースです。人口200万人都市の在宅療養支援診療所で働くソーシャルワーカーを主人公に、神経難病の患者さんが、住み慣れた場所に暮らし続けられるために、どのような戦略で、どのような仕組みを構想し、構築していけるのか、を問うものです。
Day 5「持続可能な組織のつくり方とまわし方」
組織の光と影を理解し、ガバナンスやマネジメントなど、組織の要点を学びます。学習要素は、組織論、ガバナンスです。この日の主な問いは、下記のようなものです。
- 組織は誰のものなのか?病院は誰のものなのか?
- 組織の中で、正しいことを正しくやることができないのは何故か?
- 医療における組織の特殊性はあるのか?それは何か?
- 組織の持続可能性に影響を与える要因とは何か?
- 組織におけるリーダーの役割とは何か?
を多面的に検討します。この日は、「成功する人間、継承する人間」と題するケースを利用します。グループ診療を行う在宅療養支援診療所に勤務する卒後15年目の医師を主人公に、カリスマ理事長の健康問題を機に傾きかける組織を、どのように分析し、何をするのか、を考えていきます。
Day 6「変革のためのリーダーシップ」
既存組織を変革する、地域生活をささえる新たな仕組みをつくるための発想法を学びます。学習要素は、リーダーシップ、組織変革です。この日の主な問いは、下記のようなものです。
- 組織は変わることができるのか?
- 組織の中で、人は変わることができるのか?
- 組織文化とは何か?それを変えるには、どのような方略があるのか?
- 組織が硬直化しないためには、何をすればよいのか?
- 変化に抵抗する人には、役割はないのか?
Day X「ケアする力を高めるための地域の興し方」
地域のケアする力を引き出しさらに高めるための発想や、働きかけ方を学びます。学習要素は、コミュニティ開発、地域資源開発です。この日の主な問いは、下記のようなものです。(東京校のみ提供予定のオプション科目)
- 医療資源に限らず、非公式な地域の力を“使う”ことはできないのか?
- 地元の人たちを動機づけ、互いにささえあって“まわる”エコシステムを創ることはできないか?
- 誰と何をいつやることが、合理的な“道筋”なのか、をどう判断するのか?
- 地域の課題と資源を見極めるための要点とは何か?
Day Y「課題を共有し仲間を増やすマーケティング」
地域が抱える課題を共有し、それを解決するための仲間を募り活動を拡げるための発想を学びます。学習要素は、ソーシャル・マーケティング。この日の主な問いは、、、。(東京校のみ提供予定のオプション科目)
- どのように課題を明らかにし、誰にどのように訴求するのか?
- “あなた”の活動に関わる人の動機をどのように用意するのか?
- “あなた”の他者への問いかけや働きかけは、独善的ではないのか?
- 総論に共感しても、協力行動をおこさない人は、一緒に活動をする対象なのか?
使用するケースは「小さな声を、社会に」と題して、人口12万人の総合病院で働く小児科医を主人公に、こどもの“心の貧困”について考えます。両日とも、東京校でしか学べないエクストラの科目です。地域により積極的に入りこみ、活動をしたい方には、欠かせない科目です。
そして、最終日は、「医療を変える、社会を変える:医療者たちのアイデアピッチ」として、学びながら地元で進めてきた「マイ・プロジェクト」の公開報告会です。合宿のたびに学んだ要素を取り込み、受講生どうしが相互に指摘しながら磨きをかけてきたプロジェクトを対外的に報告することで、さらに取り組みを改善し、実効性のあるものにするものです。こちらから、それぞれの会場での発表概要と質問をご覧いただくことができます。
CHL学科で紹介する参考図書
文系の本にこれほど多く触れる機会はないはない、と思います。各Dayに10冊程度の参考図書を提示します。読むべし!というより、視野を拡げたり、合宿で生まれた疑問を深めるための参考図書として毎回提示するものです。この本棚は少し古いですが、こんな感じの本たちに出合えます。ご参考までに。